- 卵管閉塞とは卵管が詰まり精子と卵子が出会えなくなる状態。自覚症状がほとんどない
- 主な原因はクラミジア感染・子宮内膜症・虫垂炎などの炎症後の癒着
- 診断には「子宮卵管造影検査(HSG)」が基本。保険適用で受けられる
- 治療は「卵管鏡下卵管形成術(FT手術)」または「体外受精への直接ステップアップ」
- 両側卵管閉塞は体外受精の絶対適応。卵管水腫がある場合は移植前に手術を検討する
「卵管が詰まっていると言われたけど、どういうこと?」「生理も排卵もあるのに、なぜ妊娠できないの?」——不妊検査で卵管閉塞(卵管狭窄)を指摘された方から多く寄せられる疑問です。
卵管は精子と卵子が出会い受精する「命が誕生する場所」です。この管が詰まると、自然妊娠はもちろん人工授精も難しくなります。しかし卵管閉塞には自覚症状がほとんどなく、不妊検査を受けるまで気づかないケースがほとんどです。
この記事では、卵管閉塞の原因・症状・診断検査の流れ・治療の選択肢まで、最新情報をもとに詳しく解説します。
🔬 卵管閉塞とは|卵管の役割と閉塞が起きる場所
卵管は子宮と卵巣をつなぐ長さ約10〜12cmの細い管です。排卵された卵子を卵管采(らんかんさい)がキャッチし、卵管の中で精子と出会って受精。その後、受精卵は卵管を通って子宮へと運ばれます。この経路のどこかが詰まる・狭くなることを「卵管閉塞(卵管狭窄)」といいます。
子宮に最も近い部分の閉塞。卵管閉塞の中で最も多く発生。卵管鏡下手術(FT手術)の対象になりやすい
卵管の中間部分の閉塞。炎症・子宮内膜症による癒着が多い。FT手術または体外受精を検討する
卵管の先端部分の閉塞や癒着。卵管水腫になりやすい。腹腔鏡手術または体外受精が選択肢。両側閉塞は体外受精の絶対適応
💡 両側卵管閉塞は「絶対不妊」
片側の卵管が閉塞していても、もう一方の卵管が正常であれば自然妊娠の可能性は残ります。しかし両側の卵管に閉塞がある場合は自然妊娠が不可能とされ、体外受精が唯一の治療法(絶対適応)になります。一方、卵管閉塞はX線・造影剤の影響(痙攣など)による「偽陽性」の可能性もあるため、再検査で確認することも重要です。
⚠️ 卵管閉塞の主な原因
卵管閉塞の多くは、炎症や感染症が原因となって卵管内・卵管周囲に癒着が起こることで発症します。自覚症状がほとんどないため、発症から長期間気づかないことも少なくありません。
| 原因 | 詳細・特徴 |
|---|---|
| クラミジア感染症 | 卵管閉塞の最大の原因。約90%が無症状のまま進行し、長期間放置すると卵管が狭窄・閉塞する。クラミジア抗体陽性の方は要注意。不妊検査前に必ず検査が必要 |
| 子宮内膜症 | 骨盤内の炎症・癒着が進行すると卵管周囲や卵管采に癒着が生じる。卵子のピックアップ障害(卵管采が卵子をキャッチできない)を引き起こすことも |
| 虫垂炎・骨盤内炎症性疾患(PID) | 腹腔内の炎症が卵管周囲に波及して癒着・閉塞を引き起こす。過去の腹腔内手術後の癒着も同様 |
| 淋菌感染症 | クラミジアと並ぶ性感染症。卵管炎から卵管閉塞へ進行するリスクがある |
| 子宮筋腫・子宮腺筋症 | 筋腫や腺筋症が卵管開口部を圧迫・閉塞させることがある |
| 原因不明 | 検査で明確な原因が特定できないケースも存在する。先天的な卵管の異常が関与している場合もある |
クラミジア感染症は感染者の約90%が無症状であり、自覚がないまま卵管炎→卵管閉塞へと進行します。過去にパートナーが変わったことがある方、性交痛・おりもの異常があった方は、不妊検査の前にクラミジア抗体検査を必ず受けてください。クラミジアが陽性の状態で子宮卵管造影検査を行うと、感染が骨盤内に広がるリスクがあります。
🏥 卵管閉塞の検査|子宮卵管造影検査(HSG)の流れ
卵管閉塞の診断には「子宮卵管造影検査(HSG:Hysterosalpingography)」が標準的な検査です。造影剤をX線で撮影することで、卵管の通過性・形態・閉塞部位を確認することができます。健康保険が適用されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査時期 | 月経終了後〜排卵日前(月経周期の8〜12日目が目安) |
| 検査時間 | 数分〜10分程度 |
| 保険適用 | あり(健康保険3割負担で受けられる) |
| わかること | 卵管の通過性・閉塞部位・卵管水腫の有無・子宮腔の形態異常 |
| わからないこと | 卵管周囲の癒着(卵管采の癒着は腹腔鏡でないと確認できない) |
| 痛みの程度 | 個人差あり。生理痛程度〜強い痛みまで幅がある。閉塞がある方は痛みが強い傾向 |
- 事前検査の確認——クラミジア検査(陽性の場合は治療後に実施)・甲状腺疾患・造影剤アレルギーがないことを確認。バリウム検査から2か月以内は実施不可
- 来院・内診台に上がる——子宮頸管にカテーテルを挿入し、造影剤を注入する準備をする
- 造影剤の注入とX線撮影——造影剤が子宮腔→卵管→腹腔へ流れる様子をX線でリアルタイムに撮影。モニターで一緒に確認できる
- 結果確認——その場で結果がわかる。閉塞がある場合は部位・程度を確認し、次の治療方針を相談
- 帰宅——検査後は通常すぐ帰宅可能。痛みが続く場合は安静が必要なことも
💡 HSG後の「通水効果」について
子宮卵管造影検査後は、造影剤が卵管内の軽微な詰まりを流す効果(通水効果)があるとされ、検査後3〜6か月は妊娠しやすくなるという報告があります。閉塞が軽度の場合、検査そのものが治療になることも。検査を受けた後は積極的に妊活を続けることが大切です。
💊 卵管閉塞の治療法|FT手術か体外受精か
卵管閉塞と診断された場合の治療は、閉塞の部位・程度・年齢・他の不妊原因の有無によって異なります。主な選択肢は「卵管鏡下卵管形成術(FT手術)」と「体外受精への直接ステップアップ」の2つです。
| 治療法 | 対象・適応 | 術後妊娠率・特徴 |
|---|---|---|
| 卵管鏡下卵管形成術(FT手術) | 間質部〜峡部の卵管閉塞。子宮に近い部分の閉塞が対象。保険適用あり | 術後の卵管通過性回復率約80%・術後妊娠率約30%。術後9か月以内に妊娠例の約80%が妊娠 |
| 腹腔鏡下卵管形成術 | 膨大部〜卵管采側の閉塞・卵管周囲癒着。遠位部病変に対応 | 癒着剥離・卵管采の開口が可能。同時に子宮内膜症の治療もできる |
| 体外受精(IVF) | 両側卵管閉塞・FT手術後も通過性が回復しない場合・年齢・卵巣予備能を考慮して直接移行 | 卵管を使わず体外で受精させるため、卵管の状態に関わらず妊娠を目指せる |
| 卵管切除術・卵管結紮術 | 卵管水腫が高度で体外受精の着床を妨げる場合 | 水腫液が子宮内に逆流して胚を流すことを防ぐ。体外受精の成功率を上げる目的 |
卵管水腫とは、卵管閉塞によって卵管の中に水分が貯留して腫れた状態です。体外受精を行っても、水腫内の液体が子宮腔に逆流して胚を押し流し、着床率が低下することがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自覚症状 | 排卵期〜黄体期に水っぽいおりもの(水様性帯下)が増えることがある |
| 診断方法 | 超音波検査・MRI検査で確認 |
| 体外受精前の対処 | 高度の卵管水腫がある場合は体外受精前に卵管切除術または卵管結紮術を検討する |
| クラミジアとの関係 | クラミジア抗体陽性の方は卵管水腫を合併しやすい。要チェック |
📊 FT手術と体外受精、どちらを選ぶか
年齢・AMH値・他の不妊原因・卵管閉塞の程度を総合的に判断して選択します。たとえば35歳以上・AMH低値・両側閉塞の場合は、FT手術で時間を使うよりも体外受精への直接ステップアップを優先する判断が多くなります。担当医とよく相談して、年齢的なタイムリミットを意識した治療計画を立てることが重要です。
❓ よくある質問(FAQ)
- 卵管閉塞は精子と卵子が出会えなくなる状態。自覚症状がほとんどなく不妊検査で初めて発見されることが多い
- 主な原因はクラミジア感染症(約90%が無症状)・子宮内膜症・骨盤内炎症による癒着
- 診断には子宮卵管造影検査(HSG)が基本。保険適用で受けられ、造影剤の通水効果で検査後に妊娠しやすくなることもある
- 治療は閉塞部位・程度・年齢に応じてFT手術(卵管鏡下)または体外受精への直接移行を選択する
- 両側卵管閉塞は体外受精の絶対適応。体外受精は卵管を使わないため両側閉塞でも妊娠を目指せる
- 高度の卵管水腫がある場合は体外受精前に卵管切除術・結紮術を検討する
- 35歳以上・AMH低値の場合はFT手術よりも体外受精への直接ステップアップを優先することが多い
卵管閉塞と診断されても、治療の選択肢は複数あります。自分の年齢・卵巣予備能・閉塞の程度をふまえて、担当医と一緒に最適な治療計画を立てることが大切です。一人で抱え込まず、セカンドオピニオンも活用しながら前向きに治療を進めていきましょう。



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