- 不妊治療中に使える休暇は「有給休暇・特別休暇・傷病手当金・休職」の4種類
- 傷病手当金は給与の約2/3が最長1年6か月支給される。有給と重複申請はNG
- 国家公務員には「出生サポート休暇(年5日〜10日)」が法定制度として整備済み
- 不妊治療連絡カードを使うと、職場への説明がプライバシーを守りながらできる
- 厚労省データでは26.1%が治療と仕事を両立できず離職・雇用形態変更を経験
「採卵の日は仕事を休まないといけないけど、理由を説明するのが怖い」「有給がもう残り少ない、どうすればいいの?」——不妊治療中の働く女性から最もよく聞かれる悩みのひとつが、仕事の休み方についての不安です。
厚生労働省の調査によると、不妊治療を経験した方のうち約26.1%が、仕事との両立ができずに離職・雇用形態変更・治療断念のいずれかを選択しています。しかし、制度を正しく知って活用すれば、多くの場合は仕事を続けながら治療を進めることができます。
この記事では、不妊治療中に使える4つの休暇・給付制度の詳細から、傷病手当金の正しい申請方法、職場への伝え方まで、具体的に解説します。
📋 不妊治療中に使える4つの休暇・制度
不妊治療中に活用できる休暇・給付制度は大きく4種類あります。自分の状況に合わせて組み合わせて使うことが大切です。
労働基準法に基づく権利。理由を問わず取得可能。採卵日・移植日などピンポイントの休みに最適。半日・時間単位取得が可能な会社もある
企業独自の制度。「不妊治療休暇」「ファミリーサポート休暇」などの名称で導入する企業が増加中。有給・無給は会社によって異なる
健康保険から給与の約2/3が支給される制度。「労務不能」の医師の診断が必要。最長1年6か月。有給と重複受給はできないため注意が必要
会社の就業規則に定められた休職制度を利用する方法です。傷病休職として申請できる場合があります。休職中は基本的に無給ですが、傷病手当金を受給することで収入をある程度補うことができます。休職可能期間・条件は会社によって大きく異なるため、人事担当者への確認が必要です。
💴 傷病手当金の正しい受け取り方
不妊治療中の「お金の休み方」として最も重要な制度が傷病手当金です。正しく申請しないと受け取れなくなることがあるため、仕組みをしっかり理解しておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給対象者 | 健康保険(協会けんぽ・組合健保)に加入している会社員・公務員。国民健康保険加入の自営業・フリーランスは対象外 |
| 支給額 | 標準報酬日額の2/3。例:月収30万円なら1日あたり約6,667円 |
| 支給期間 | 最長1年6か月(通算) |
| 待期期間 | 連続3日間の休業が必要(待期期間)。4日目から支給対象となる |
| 支給条件 | ①健康保険加入 ②業務外の傷病による療養 ③労務不能の医師の証明 ④給与の支払いがない期間 |
有給休暇を取得すると、その期間は会社から給与が支払われた状態になるため、傷病手当金は支給されません。最も手取りが多くなる休み方は、「待期期間の最初の3日間のみ有給を使い、4日目以降は欠勤扱いにして傷病手当金を申請する」方法です。有給から使うのが当然と思いがちですが、医師が労務不能と判断している期間については欠勤扱いの方が有利になるケースがあります。
- 申請書を入手する——協会けんぽのWebサイト、または会社の人事・総務部に依頼して入手。1枚の書類に「本人・会社・医師」の3か所の記入欄がある
- 本人記入欄を記入する——氏名・振込先口座・休業した理由・期間を記入
- 会社記入欄を記入してもらう——人事・総務担当者に依頼。給与の支払いがなかったことを証明してもらう
- 医師の意見書を書いてもらう——担当医に「労務不能」の証明を記載してもらう。これが最も重要なポイント
- 健康保険組合(または協会けんぽ)に提出する——申請後、通常1〜2か月で振込される
💡 「労務不能」の証明について
傷病手当金の最大のハードルは「労務不能の証明」です。「通院のため」だけでは認められません。治療に伴う身体的・精神的な症状(腹痛・強い倦怠感・不眠・抑うつなど)により働けない状態であることが必要です。不妊治療の精神的苦痛が続いている場合は、心療内科・精神科への受診も選択肢のひとつです。「眠れない」「仕事に集中できない」という状態は、医学的に労務不能として認められるケースがあります。
🏢 会社の特別休暇・公務員制度を確認する
近年、不妊治療と仕事の両立支援に取り組む企業が急増しています。また、国家公務員には法定の特別休暇制度が整備されています。まず自分の職場にどんな制度があるか確認しましょう。
| 区分 | 休暇日数 | 内容 |
|---|---|---|
| 基本の不妊治療休暇 | 年間5日(有給) | 不妊治療に係る通院等のための休暇。令和3年12月1日より新設 |
| 体外受精等の高度治療 | 年間さらに5日追加 | 体外受精・顕微授精などの生殖補助医療を受ける場合、合計最大10日取得可 |
| 病気休暇 | 最大90日 | 医師の診断書があれば取得可能。不妊治療が原因の疾病も対象 |
| 制度名・企業 | 内容 |
|---|---|
| 不妊治療特別休暇(月1日有給) | 不妊治療または生理による体調不良のために月1日の特別有給休暇を付与。1時間単位の取得も可能 |
| ファミリーサポート休暇(年5〜31日) | 不妊治療・育児・介護など家族のための汎用休暇。プライバシーを守りながら取得できる設計が多い |
| 積立有給休暇制度 | 失効する予定の有給を積立。20〜50日程度を上限に不妊治療・長期療養に使える |
| 短時間勤務制度 | 所定労働時間を8時間→7時間または6時間に短縮。通院しやすい環境をつくる |
| フレックスタイム・リモートワーク | 出勤時間の調整・在宅勤務で通院と仕事を両立しやすくする |
📊 「くるみんプラス」認定制度(令和4年4月〜)
厚生労働省は、不妊治療と仕事の両立支援に取り組む優良企業に「くるみんプラス」認定を付与する制度を2022年4月から開始しました。認定取得を目指す企業では、特別休暇の整備・相談窓口設置・周知啓発などの取り組みが進んでいます。就職・転職の際にこの認定マークを確認することも、治療と仕事を両立できる職場を選ぶ目安になります。
📄 不妊治療連絡カードの活用法
職場への説明が難しいと感じる方に有効なのが、厚生労働省が作成した「不妊治療連絡カード」です。プライバシーを守りながら、職場への必要な配慮を伝えることができます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成元 | 厚生労働省(無料でダウンロード可能) |
| 記載内容 | 通院の頻度・急な休暇の可能性・時間外勤務の制限・在宅勤務の希望など、職場への必要な配慮事項 |
| 記入者 | 担当医師(クリニックによっては無料対応。有料の場合もあり) |
| 使い方 | 医師に記入してもらい、人事・労務担当者または上司に提出。治療内容の詳細を説明せずに配慮を求めることができる |
| メリット | 「不妊治療中であること」を証明する書類として活用でき、企業独自の支援制度を申請する際のツールにもなる |
💡 連絡カードを使う際の注意点
連絡カードを提出する場合は、直属の上司か人事担当者のどちらに渡すかを事前に検討しましょう。上司との関係性・職場の雰囲気によって判断が変わります。カードの提出だけでは不十分な場合は、「急な通院が月○回程度あること」「判定日は仕事を休む可能性があること」など、業務への具体的な影響を簡潔に伝えると職場側も対応しやすくなります。
❓ よくある質問(FAQ)
- 使える制度は「有給・特別休暇・傷病手当金・休職」の4種類。状況に合わせて組み合わせて活用する
- 傷病手当金は給与の約2/3が最長1年6か月支給される。有給と重複受給はできないため申請順序に注意
- 「待期3日間のみ有給→4日目以降は欠勤で傷病手当金申請」が最も手取りが多くなる方法
- 国家公務員には年5〜10日の「出生サポート休暇」が法定制度として整備されている
- 民間企業でも不妊治療特別休暇・ファミリーサポート休暇を導入する企業が増加中。就業規則を確認する
- 「不妊治療連絡カード」(厚労省)を使えばプライバシーを守りながら職場への配慮を依頼できる
- 年次有給休暇は理由不要で取得できる権利。治療を理由に拒否・不利益扱いをされた場合は労働局に相談を
不妊治療中の「休み方」を正しく知ることは、治療を続けるための大切な準備です。制度をうまく活用して、仕事も治療も無理なく続けられる環境を整えていきましょう。一人で抱え込まず、職場の人事担当者・担当医・社会保険労務士など、頼れる専門家を積極的に活用することも大切です。



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