- 不妊治療の費用は医療費控除の対象。保険診療の3割負担分・先進医療費・通院交通費なども含まれる
- 計算式:(年間医療費合計 − 助成金・保険給付金) − 10万円 = 控除額(最大200万円)
- 所得200万円未満の場合は「所得×5%」を差し引く。パート・低所得の方が控除を受けやすい仕組み
- 助成金・民間保険の給付金は差し引く必要がある(国税庁通達より)。自治体の先進医療助成も同様
- 夫婦の医療費は合算可能。所得が高い方が申告した方が還付額が大きくなる
- サラリーマン・会社員も確定申告で申請可能。e-Taxなら自宅から5〜30分で完了
- 過去5年分まで遡って申告できる(還付申告)
📊 医療費控除の基本|まず仕組みを理解する
医療費控除とは、1月1日〜12月31日の1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超えた金額が所得から差し引かれ、払いすぎた税金が還付される制度です。不妊治療は医療費が高額になりやすいため、積極的に活用すべき制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告できる人 | 納税者本人(所得税を払っている人)。パートや扶養内でも所得税を払っていれば申告可能 |
| 対象期間 | その年の1月1日〜12月31日に支払った医療費 |
| 申告先 | 現在の住所を管轄する税務署(e-Tax・郵送・窓口の3方法) |
| 申告期間 | 翌年2月16日〜3月15日(還付申告は1月1日〜可能) |
| 遡り申告 | 過去5年分まで遡って申告できる(例:2026年中は2021年分まで申告可能) |
| 控除上限 | 200万円(実際にはほとんどの家庭で上限には達しない) |
💡 会社員・サラリーマンも確定申告が必要
年末調整をしている会社員でも、医療費控除は確定申告で行う必要があります(年末調整では申請できません)。「確定申告は自営業の人だけ」と思い込んで申請しないままになっているケースが非常に多いです。国税庁の確定申告作成コーナーを使えば、指示に従って入力するだけで完成します。
🧮 医療費控除の計算方法|具体的なシミュレーション
医療費控除の計算式は以下の通りです。
医療費控除額 =(年間医療費合計 − 保険金・助成金などで補填される金額)− 10万円※
※所得金額が200万円未満の場合は「所得金額×5%」が10万円の代わりに使用される
| 差し引く必要がある金額(補填される金額) | 差し引かない(そのまま医療費に含める) |
|---|---|
| 自治体からの不妊治療助成金・先進医療助成金 | 保険診療の自己負担(3割) |
| 民間医療保険の給付金(手術給付金・先進医療給付金) | 先進医療費(全額) |
| 高額療養費の払戻金 | 薬代(処方薬) |
| 会社からの補助金・健保組合からの補助 | 通院交通費(公共交通機関のみ) |
🔢 「10万円」か「所得×5%」か|どちらを使うかの判定方法
「10万円と所得の5%、どちらか少ない方を差し引く」という表現に戸惑う方が多いですが、仕組みは単純です。自分の所得額を確認するだけで判定できます。
| あなたの所得金額(※) | 差し引く金額(しきい値) | 計算例 |
|---|---|---|
| 200万円以上 | 一律 10万円 | 所得500万円 → しきい値10万円 |
| 200万円未満 | 所得金額 × 5% | 所得150万円 → 150万×5%=7.5万円 |
| 0円(専業主婦等) | 所得税の還付はなし | 所得のある配偶者が申告する |
※「所得金額」=源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄の数字。額面年収ではないので注意。
年間医療費(不妊治療):20万円・助成金等なし
💡 「所得金額」は額面年収ではない
源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が「所得金額」です。給与収入200万円でも、給与所得控除後の所得金額は約132万円になるため、所得×5%(約6.6万円)が適用されます。扶養内パートの方・低所得の方はこの計算で控除を受けやすくなります。源泉徴収票が手元にない場合は会社に再発行を依頼してください。
81万円 − 10万円 = 71万円
住民税軽減:61万円 × 10% = 6.1万円
国税庁の通達(所得税法第73条・所得税基本通達73-8)により、自治体の不妊治療助成金・先進医療助成金・民間保険の給付金・高額療養費の払戻金はすべて医療費から差し引く必要があります。差し引かずに申告すると過大申告となり、後から修正を求められる場合があります。助成金を「まだ受け取っていないが受け取る予定が確定している」場合も、その金額を差し引いて計算します(東京国税局の公式見解より)。
✅ 医療費控除の対象になる費用・ならない費用
| 費用の種類 | 対象 | 補足 |
|---|---|---|
| 体外受精・顕微授精・人工授精・タイミング法の診療費 | ✅ 対象 | 保険3割負担分も含む(国税庁公式) |
| 先進医療費(ERA・タイムラプス・PICSI等) | ✅ 対象 | 全額自費でも医療費控除の対象 |
| 処方された薬代(黄体ホルモン・排卵誘発剤等) | ✅ 対象 | 医師処方の薬であること |
| 漢方薬(医師の処方) | ✅ 対象 | 医師の処方であれば対象 |
| 通院交通費(電車・バス等の公共交通機関) | ✅ 対象 | ICカードの履歴も可。領収書不要だが記録を残す |
| 紹介状作成費用(他院への転院時) | ✅ 対象 | 医師の紹介料として認められる |
| 不育症・子宮筋腫等の関連治療費 | ✅ 対象 | 不妊治療に関連した医師による治療 |
| 妊活サプリメント・葉酸サプリ | ❌ 対象外 | 医師の処方でない・医薬部外品のため |
| 妊娠検査薬・排卵検査薬 | ❌ 対象外 | 医薬品ではなく診断薬のため |
| タクシー代(通院) | ❌ 原則対象外 | 緊急時・公共交通機関が使えない場合は例外あり |
| 自費の人間ドック・妊活検査(治療に繋がらない場合) | ❌ 対象外 | 疾病の診断等に直接つながらない場合 |
| 保険会社提出用の診断書代 | ❌ 対象外 | 治療目的でないため |
💊 市販の薬は「医薬品」なら対象になる
医師に処方された薬だけでなく、ドラッグストアで購入した医薬品(OTC医薬品)も医療費控除の対象です。ただしサプリメント・医薬部外品は対象外です。パッケージに「医薬品」「指定第2類医薬品」などの表示があるものが対象となります。
👫 夫婦での医療費合算|誰が申告すべきか
不妊治療の費用は夫婦のどちらが払っても、生計を一にしている配偶者の医療費を合算して申告できます。夫が払った費用も妻が払った費用もひとつにまとめて申告可能です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 合算できる範囲 | 生計を一にしている配偶者・親族の医療費はすべて合算可能。夫の歯科治療費・妻の不妊治療費・子どもの病院代なども全部まとめて申告できる |
| どちらが申告すべきか | 所得(課税所得)が高い方が申告した方が有利。税率が高いほど控除効果が大きくなる。夫婦で所得が同程度なら共同世帯として合算し所得の高い方が申告するのが一般的 |
| 申告できるのは1人 | 夫婦で別々に申告することはできない。どちらか1人が合算して申告する |
| 専業主婦(夫)の場合 | 所得がなければ所得税の還付はできないため、所得のある配偶者が申告する |
| 課税所得 | 所得税率 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 10% | 15% |
| 195〜330万円 | 10% | 10% | 20% |
| 330〜695万円 | 20% | 10% | 30% |
| 695〜900万円 | 23% | 10% | 33% |
| 900〜1,800万円 | 33% | 10% | 43% |
例:課税所得500万円(税率20%)の場合、医療費控除額50万円→還付・軽減額は約15万円
📋 申告の手順|5ステップで完了
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| STEP 1 領収書を集める |
1年間(1月〜12月)の医療費の領収書をすべて保管。クリニック・薬局・交通費の記録を揃える。領収書は5年間保管義務あり(提出は不要) |
| STEP 2 医療費控除の明細書を作成 |
国税庁HPの「確定申告作成コーナー」または「医療費集計フォーム」を使って入力。医療機関ごとに金額・受診者・支払日を記録 |
| STEP 3 補填される金額を確認・差し引く |
助成金・民間保険給付金・高額療養費の払戻金の受取額を確認し、医療費から差し引く |
| STEP 4 確定申告書を作成・提出 |
国税庁の確定申告作成コーナーで入力→e-Tax(オンライン)または郵送・窓口で提出。マイナンバーカードがあればe-Taxが最も簡単 |
| STEP 5 還付金の受取 |
申告後1〜2か月で指定口座に還付金が振り込まれる |
加入している健康保険組合から届く「医療費のお知らせ」(医療費通知)は、明細書作成の代わりに使用できます。ただし12月分の費用が翌年1月以降に届く場合があり、最新月分が含まれていないことがあります。漏れがないかを必ず領収書と照合してください。また先進医療費・交通費などは「医療費のお知らせ」には記載されないため、これらは別途明細書に記入が必要です。
📝 医療費控除の明細書の書き方|助成金の差し引き方も解説
e-Taxや確定申告作成コーナーを使う場合も、医療費控除の明細書(医療費集計フォーム)の入力内容は同じです。特に「補填される金額(助成金・給付金)の差し引き方」でつまずく方が多いため、実際の入力例をもとに解説します。
| 入力欄 | 何を書くか | 記入例・注意点 |
|---|---|---|
| ①医療を受けた方の氏名 | 患者の名前(夫・妻・子ども) | 夫婦合算の場合は一行ずつ分けて記入。同じ欄に全員まとめてOK |
| ②病院・薬局等の名称 | クリニック名・薬局名 | 「〇〇レディースクリニック」「〇〇薬局」など。電車代は「電車代(通院)」等と記入 |
| ③医療費の区分 | 診療・治療か、医薬品購入か | クリニック→「診療・治療」/薬局→「医薬品購入」/交通費→「その他」 |
| ④支払った医療費 | 実際に支払った金額(円) | 領収書記載の金額をそのまま入力。保険3割負担の金額でOK |
| ⑤補填される金額 | 助成金・保険給付金・高額療養費の払戻金 | この欄に入力することで自動的に差し引かれる。詳細は下記参照 |
④支払った医療費:150,000円
⑤補填される金額:150,000円(助成金と同額を記入)
→ この行の控除対象医療費:0円
④支払った医療費:600,000円(年間合計)
⑤補填される金額:200,000円(給付金の額)
→ この行の控除対象医療費:400,000円
確定申告の年(1〜12月)に受け取った助成金のみを⑤に記入。翌年に受け取る予定の分はその翌年の申告で差し引きます。「申請中・結果待ち」の場合は念のため税務署への確認を推奨します。
③区分:「その他」
④支払った医療費:月間の合計交通費(例:電車往復560円×12回=6,720円)
⑤補填される金額:0円
※ICカードの利用履歴・メモ書きで代用可。領収書は不要
助成金・給付金は「その治療に対して支払われた補填」として、対応する医療費の行に記入します。例えば「ERA検査に対する助成金」はERA検査の費用行に記入し、体外受精の費用行には記入しません。合計額を最後の行にまとめて記入する方法も認められていますが、後から確認しやすくするため、できるだけ対応する医療費の行に書くことをおすすめします。
| 画面・操作 | 内容 |
|---|---|
| 「医療費控除」を選択 | 所得控除の入力画面で「医療費控除」にチェック |
| 入力方法を選択 | 「医療費集計フォームを読み込む」または「手入力する」を選択。件数が多い場合はExcelの医療費集計フォームに入力してアップロードする方が便利 |
| 医療費の入力 | 受診者・医療機関名・支払額・補填される金額(助成金等)を入力。⑤欄に助成金を入力することで自動的に差し引かれる |
| 合計確認 | 「支払医療費合計」「補填される金額合計」「医療費控除額」が自動計算される。10万円(または所得×5%)は自動で差し引かれる |
| 申告書への反映 | 確定申告書の「医療費控除」欄に自動反映。e-Taxで送信または印刷して郵送・持参 |
⚠️ よくある間違い・注意点
| よくある間違い | 正しい対応 |
|---|---|
| 助成金・給付金を差し引かずに申告した | 必ず差し引く。高額療養費・自治体助成・民間保険給付金はすべて「補填される金額」として差し引く |
| サプリ代・妊娠検査薬を含めて申告した | 対象外。医師の処方でない・医薬品でないものは除外 |
| タクシー代をすべて含めた | 原則対象外。電車・バスなど公共交通機関のみ |
| 夫婦別々に申告しようとした | 医療費控除は1世帯で1人が合算申告。別々には申告できない |
| 確定申告の締め切りを過ぎてしまった | 還付申告は5年間遡れる。いつでも申告可能(税務署が混む2〜3月を避けても問題なし) |
| ふるさと納税のワンストップ特例と医療費控除を両立しようとした | 医療費控除を申告すると確定申告が必要になり、ワンストップ特例は使えなくなる。ふるさと納税も確定申告で申告し直す必要がある |
❓ よくある質問(FAQ)
- 不妊治療・人工授精・先進医療・処方薬・通院交通費はすべて医療費控除の対象。サプリ・妊娠検査薬は対象外
- 計算式:(年間医療費合計 − 助成金・給付金)− 10万円(所得200万未満は所得×5%)= 控除額
- 所得200万円未満の方は「所得×5%」が適用。扶養内パートの方でも控除を受けやすい仕組み
- 自治体助成金・民間保険給付金・高額療養費払戻金はすべて差し引く(国税庁通達)。明細書の⑤欄に入力
- 夫婦の医療費は合算可能。所得・課税所得が高い方が申告した方が還付額が大きくなる
- 会社員も確定申告が必要。e-Taxなら自宅から5〜30分で完了。マイナンバーカードがあれば便利
- 過去5年分まで遡って申告できる。申告し忘れていた分もまだ間に合う可能性がある
- ふるさと納税のワンストップ特例は、医療費控除を申告すると無効になるため要注意
- 領収書は5年間の保管義務あり。毎月クリニックの領収書をまとめて保管する習慣をつけよう



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