- 不妊治療と仕事の両立ができずに退職した人は約11%、女性では約23%(厚労省・令和5年度調査)
- 職場への告知は「義務」ではない。伝える・伝えないはあなた自身が決めてよい
- 伝える場合は「全員に話す必要はなく、直属の上司または人事担当者だけで十分」
- 厚生労働省の「不妊治療連絡カード」を活用すると、医師記載の証明書として職場との調整がスムーズになる
- フレックス・半日有給・テレワークなど、職場の制度を活用することで治療と仕事を両立しやすくなる
📊 現状と課題|なぜ不妊治療と仕事の両立は難しいのか
不妊治療と仕事の両立は、多くのカップルにとって深刻な課題です。厚生労働省「令和5年度 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」によると、仕事との両立ができず退職した人の割合は約10.9%にのぼり、女性に限ると約23%が離職を経験しています。
両立が難しい最大の理由は、不妊治療の通院日が月経周期に合わせて決まるため、前もって予定が立てにくいことです。「今日の検査結果次第で明日採卵」という急な調整が必要になる場面も多く、職場との日程調整に苦労するケースが後を絶ちません。
| 治療の種類 | 通院頻度の目安 | 特に調整が必要な場面 |
|---|---|---|
| タイミング法・人工授精 | 周期あたり2〜5回程度 | 排卵日前後(急な通院が発生しやすい) |
| 体外受精(採卵周期) | 周期あたり5〜10回程度 | 採卵日(半日〜全日の休みが必要) |
| 凍結胚移植周期 | 周期あたり3〜6回程度 | 移植日(半日程度の休みが必要) |
📌 治療によっては「今月は採卵なし」「次の周期に繰り越し」など、計画が変わることも日常的です。職場には通院のスケジュールが読みにくいことを事前に理解してもらえると、双方の負担が大きく減ります。
🤔 伝える・伝えない?|まず「自分はどうしたいか」を整理する
職場に不妊治療を伝えるかどうかに、正解はありません。伝えることは義務ではなく、あなた自身の選択です。まずはそれぞれのメリット・デメリットを整理して、自分に合った判断をしましょう。
| メリット | デメリット・リスク | |
|---|---|---|
| 伝える | 急な休みへの理解が得られやすい/職場の制度を正式に使いやすくなる/精神的な負担が軽減される場合がある | プライバシーが職場に知れわたる可能性/無理解な反応を受けることがある/昇進・業務分配に影響することへの不安 |
| 伝えない | プライバシーが守られる/人間関係への影響がない/ハラスメントを受けるリスクが低い | 急な休みが取りにくい/理由を言えないことでストレスが増す場合がある/職場の制度が使いにくい |
不妊治療を職場に伝えることで、昇進・業務分配・雇用継続に不利益な扱いを受けることは、法律・就業規則の観点から問題のある行為(ハラスメント)です。伝えることで不利益を被った場合は、社内相談窓口・都道府県労働局の均等室・厚生労働省の相談窓口に相談できます。
💬 上司への伝え方|具体的な言葉と3つのポイント
「伝えよう」と決めたら、まずは直属の上司または人事担当者だけに話すのが基本です。全員に一度に伝える必要はありません。伝える際は以下の3つのポイントを意識しましょう。
| ポイント | 具体的な内容 |
|---|---|
| ① 何を伝えるか絞る | 「不妊治療中で通院が必要」という事実のみで十分。治療の詳細・成功率・費用など個人的な情報は伝える必要なし |
| ② どんな配慮が必要か具体的に伝える | 「月に2〜5回、突然休みが必要になることがある」「朝の検査のため、週1回遅刻する可能性がある」など具体的に |
| ③ どこまで共有してよいか確認する | 「チームメンバーへの共有範囲はどうするか」「どの情報を誰まで伝えてよいか」を事前に決めておく |
💡 「体調管理のための通院」という表現でもOK
どうしても「不妊治療」という言葉を使いたくない場合は、「婦人科系の治療のため通院が必要」「ホルモン治療のため急な通院が発生することがある」などの表現でも伝わります。詳細を伝える義務はなく、スケジュール調整に必要な最低限の情報だけで十分です。
📄 不妊治療連絡カードを活用する|厚労省公式ツール
厚生労働省が作成した「不妊治療連絡カード」は、不妊治療を受けている労働者が職場へ治療状況を伝え、配慮を求めるための公式ツールです。主治医が記載する証明書形式になっており、口頭での説明が難しい場合や、職場の理解を正式に得たい場合に非常に有効です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成元 | 厚生労働省(公式) |
| 記載者 | 主治医(医療機関が証明書として記載) |
| 主な記載内容 | 治療の種類・通院頻度の目安・必要な配慮事項(遅刻・早退・急な休み等) |
| 活用場面 | 上司・人事への説明補助、職場内制度の申請時、会社独自の支援制度利用時 |
| 入手方法 | 厚生労働省HPからダウンロード可能。主治医に記載を依頼する |
📋 連絡カードは「提出義務なし」で任意使用
不妊治療連絡カードは任意のツールです。「カードがないと制度が使えない」ということはなく、口頭での説明でも構いません。ただし、職場での理解・配慮を得るための客観的な証明として非常に効果的です。クリニックに「不妊治療連絡カードへの記入をお願いしたい」と伝えてみましょう。
🏢 職場で活用できる制度・支援|知っておきたい選択肢
不妊治療中の働き方を支える制度は、大きく「会社独自の制度」と「法的権利として使える制度」の2つがあります。まず自分の会社の就業規則・福利厚生を確認し、人事担当者に相談してみましょう。
| 制度の種類 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 半日・時間単位の有給休暇 | 通院のため午前だけ休む、遅刻・早退を有給で処理 | 多くの企業で利用可能。まず就業規則を確認 |
| フレックスタイム制 | コアタイム外の通院を柔軟に調整 | 導入企業では最も活用しやすい制度 |
| テレワーク(在宅勤務) | 通院後に在宅で仕事。体調不良時も働きやすい | 不妊治療を理由にテレワーク申請が可能な企業も増加 |
| 不妊治療専用の特別休暇 | 一部企業が独自に設けている有給の特別休暇 | 企業調査では26.5%の企業が何らかの支援制度あり |
| 積立休暇(失効年休の積立) | 使い切れなかった年休を積み立てて通院に使用 | 制度がある場合は積極活用を |
| 短時間勤務制度 | 治療期間中の所定労働時間の短縮 | 体外受精の採卵周期など負担が大きい時期に有効 |
厚生労働省は、不妊治療と仕事の両立に積極的に取り組む企業を「くるみんプラス」として認定する制度を設けています。転職・就活の際の職場選びの指標としても参考になります。厚生労働省の「両立支援のひろば」サイトで認定企業を検索できます。
👥 同僚への伝え方|伝える範囲の考え方
上司に伝えた後、同僚にどこまで話すかは非常に悩ましい問題です。基本的には同僚への告知は必須ではありません。ただし、急な業務引き継ぎや休みへの理解を得るために、信頼できる同僚に最低限の情報だけを伝える選択肢もあります。
| パターン | 伝え方の例 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| まったく伝えない | 「体調管理のため、急に休む場合があります」程度で対応 | プライバシーを最優先したい場合 |
| 一部の信頼できる同僚だけに | 「婦人科系の治療中で月に数回通院があります。業務の急な引き継ぎを頼むことがあるかもしれません」 | 業務の引き継ぎが多い場合・信頼関係がある同僚がいる場合 |
| チーム全員に上司経由で伝えてもらう | 上司から「体調管理のための通院で急な休みがあるかもしれない」と伝えてもらう | チームの理解が必要・業務調整が複雑な場合 |
❓ よくある質問(FAQ)
- 不妊治療を職場に伝えるかどうかは義務ではなく、あなた自身が決めてよい選択
- 伝える場合はまず直属の上司または人事担当者のみに。全員に伝える必要はない
- 伝える内容は「通院が必要・急な休みが発生する可能性」の最低限でOK。詳細を話す義務はない
- 厚労省「不妊治療連絡カード」(医師が記載する証明書)を活用すると職場との調整がスムーズになる
- フレックス・半日有給・テレワークなど既存制度をフル活用。「くるみんプラス」認定企業は支援が充実
- 不妊治療を理由とした不利益取扱いやハラスメントは問題ある行為。困ったら労働局に相談できる
- 同僚への告知は必須ではないが、信頼できる人への最低限の情報共有で精神的負担が軽減される場合も
- 退職・離職を選択する前に、職場の制度・支援・相談窓口を確認することを強くおすすめする



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