- 不妊原因の約50%に男性側の因子が関与(WHO報告)。妊活開始と同時に男性も検査を受けることが重要
- 男性不妊の専門的な検査・治療は泌尿器科(男性不妊外来)が担当。産婦人科・レディースクリニックでは対応できない検査・手術がある
- 精索静脈瘤(男性不妊の約30〜40%)・無精子症(TESE・micro-TESE)の手術は2022年4月から保険適用
- 精索静脈瘤の顕微鏡下手術は日帰り可能。費用は3割負担で片側約5万円・両側約8〜9万円
- 無精子症でも、精巣内に精子が見つかれば顕微授精(ICSI)で妊娠できる可能性がある
- 「精液検査が正常だった」だけでは男性不妊を完全には除外できない。泌尿器科での詳しい診察・血液検査・超音波が必要
「妊活は女性が主役」と思われがちですが、不妊の原因の約半数は男性側にあることがわかっています。しかし「泌尿器科に行けばいいの?」「何を調べてもらえるの?」と、男性側の受診について情報が少なく、戸惑う方も多いのが現状です。
この記事では、男性不妊における泌尿器科受診の必要性・受診の流れ・検査内容・主な治療法と費用まで、2024〜2025年の最新ガイドライン情報をもとに詳しく解説します。
👨 男性不妊の原因と種類
男性不妊の原因は大きく3つに分類されます。最も多いのは造精機能障害(精子の数・運動率・形態の問題)で、男性不妊全体の約83%を占めます。
精巣の機能低下により精子が作られない・少ない・動きが悪い状態。原因不明が約56%、精索静脈瘤が約6%を占める。乏精子症・無力精子症・無精子症が含まれる
精子は作られているが、精管の閉塞・先天的欠如などにより精液に精子が出てこない状態(閉塞性無精子症)。精管再建術やTESEで対応可能
ED(勃起障害)・射精障害・逆行性射精などにより精液が体外に出ない状態。原因に応じて薬物療法・カウンセリング・尿から精子を回収する方法などで対応
💡 「精索静脈瘤」が男性不妊の重要な原因
精索静脈瘤とは、精巣の静脈に逆流が起きてコブ状になった状態です。陰嚢内の温度が上がることで精子の形成・運動性が低下します。男性不妊症患者の約30〜40%に認められ、手術で治療することが可能。第二子不妊の場合は80〜90%が精索静脈瘤によるとも言われており、非常に重要な疾患です。
🏥 どこに受診する?泌尿器科と産婦人科の違い
男性不妊の検査・治療は、産婦人科・レディースクリニックではなく泌尿器科(男性不妊外来)が専門です。受診先の選び方を整理します。
精液検査に加え、身体診察(精巣の大きさ・精索静脈瘤の有無)・血液検査(ホルモン値)・超音波検査を実施。精索静脈瘤手術・TESE・micro-TESEなどの手術も対応。最も詳しく男性不妊を診断・治療できる
精液検査(精子の数・運動率・形態の確認)は産婦人科でも実施可能。ただし身体診察・超音波・手術には対応していない施設が多い。精液検査で異常が見つかった場合は泌尿器科への紹介が必要
| 施設の種類 | 特徴 | おすすめの方 |
|---|---|---|
| 男性不妊専門クリニック(泌尿器科) | 男性不妊に特化。生殖医療専門医(泌尿器科)が在籍。手術まで一貫して対応。プライバシーへの配慮が高い | 精液検査で異常が見つかった・泌尿器科受診を勧められた・詳しく調べたい方 |
| 大学病院・総合病院の泌尿器科 | micro-TESEなど高度な手術に対応。産婦人科との院内連携が取りやすい。予約が取りにくい場合がある | 無精子症・高度乏精子症・複雑な原因が疑われる方 |
| 不妊治療クリニックの男性不妊外来 | 女性のパートナーが通院中のクリニックで男性も受診できる場合がある。夫婦で情報共有しやすい | パートナーがすでにクリニックに通院中・夫婦そろって受診したい方 |
💡 妊活開始のタイミングで男性も受診を
「女性が先に検査して、問題があれば男性も」という流れは時間のロスにつながります。妊活を始めると同時に、男性も精液検査を受けることが推奨されています。精液検査は痛みがなく短時間で完了するため、女性の不妊検査と並行して進めましょう。特に35歳以上の女性のパートナー・精液検査で異常を指摘された方・第二子不妊の方は早めの受診をおすすめします。
🔬 泌尿器科での検査内容と流れ
泌尿器科(男性不妊外来)の初診では、精液検査だけでなく身体診察・血液検査・超音波検査を組み合わせて、男性不妊の原因を詳しく調べます。
- 問診票の記入・問診——既往歴(おたふくかぜ・精巣炎・停留精巣など)・服薬中の薬・生活習慣(喫煙・飲酒・サウナ)・性交渉の状況などを確認する
- 身体診察——精巣の大きさ・硬さの確認、精索静脈瘤の有無(触診・視診)を確認する。これは産婦人科では実施できない泌尿器科特有の診察
- 精液検査(2回以上実施)——精子の濃度・運動率・奇形率・精液量などを測定。1回の結果だけでは変動があるため、2回以上の検査が推奨される
- 血液検査(ホルモン検査)——FSH(卵胞刺激ホルモン)・LH・テストステロン・プロラクチンなどを測定し、ホルモン異常の有無を確認する
- 超音波検査(陰嚢超音波)——精巣の大きさ・精索静脈瘤の程度・精巣上体の状態を画像で詳しく確認。精索静脈瘤の診断に特に有用
- その他の検査(必要に応じて)——染色体検査・Y染色体微小欠失検査(AZF)・精子DNA断片化検査・精管造影など。無精子症が疑われる場合や遺伝的な背景を調べる際に実施
| 検査項目 | 費用目安(3割負担) | 備考 |
|---|---|---|
| 初診料+精液検査+血液検査+超音波 | 合計約7,000円前後 | 2022年4月から不妊治療の保険適用拡大により、男性不妊外来も保険診療が基本に |
| 染色体検査(AZF遺伝子検査含む) | 別途数千〜数万円 | 無精子症が疑われる場合に追加。保険適用になる場合がある |
| 精子DNA断片化検査(DFI) | 2〜5万円程度(自費が多い) | 反復ART不成功・反復流産のカップルに検討される |
💊 主な男性不妊の治療法
男性不妊の治療は、原因に応じて「薬物療法」「手術療法」「生殖補助医療(ART)」の3つに大別されます。
| 薬剤 | 対象・内容 | 保険適用 |
|---|---|---|
| クロミフェン(内服) | テストステロン値が低くゴナドトロピンが高くない乏精子症に使用。精子濃度・運動率の改善を期待。男性不妊診療ガイドライン2024に記載 | 適応外使用(保険外の場合あり) |
| ゴナドトロピン注射 | ホルモン分泌異常(下垂体機能低下症)による乏精子症に有効。精子形成を促す | 保険適用あり(条件による) |
| 漢方薬(補中益気湯・八味地黄丸等) | 精子所見の改善を期待して処方されることがある。エビデンスは限定的だが副作用が少ない | 保険適用あり(病名による) |
| 手術 | 対象 | 費用目安(3割負担) |
|---|---|---|
| 顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術 | 精索静脈瘤(男性不妊の約30〜40%)。逆流している静脈を結紮して精巣環境を改善。術後数か月で精液所見が約70〜80%の症例で改善 | 片側:約4〜5万円 両側:約8〜9万円 (日帰り・局所麻酔も可能) |
| 精巣内精子採取術(Simple-TESE) | 閉塞性無精子症。精巣を切開して精子を直接採取し顕微授精に使用。比較的シンプルな手術 | 約4万円前後 |
| 顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE) | 非閉塞性無精子症。顕微鏡で精子が作られている精細管を探して採取。高度な技術が必要。精子が見つかる確率は症例により異なる | 約8万円前後 (選定療養費が別途かかる施設あり) |
| 精管吻合術・精管附睾丸吻合術 | 閉塞性無精子症(精管の閉塞を再建する手術)。パイプカット後の復元にも使用 | 保険適用。費用は施設により異なる |
手術や薬物療法だけでは妊娠に至らない場合、または男性不妊の程度によっては、最初から生殖補助医療との組み合わせが選択されます。
| 精子の状態 | 推奨される治療 |
|---|---|
| 軽度〜中等度の乏精子症・精子無力症 | タイミング法・人工授精(AIH)。薬物療法との組み合わせで精液所見の改善を図る |
| 高度乏精子症(精子濃度100万/mL以下) | 顕微授精(ICSI)が基本。泌尿器科での精子凍結を先行させることも検討 |
| 閉塞性無精子症 | TESE(精巣内精子採取)+顕微授精(ICSI)。または精管再建術で自然妊娠を目指す |
| 非閉塞性無精子症 | micro-TESE+顕微授精(ICSI)。精子が見つかった場合に凍結保存し、パートナーの採卵・移植と組み合わせる |
精索静脈瘤がある場合、「手術で精液所見の改善を待ってから妊活する」か「すぐにARTに進む」かは、女性のパートナーの年齢・卵巣予備能・妊活の緊急性によって判断が変わります。女性が35歳以上・AMHが低値・卵子の数が少ない場合は、手術の回復を待つよりもARTを優先する判断もあります。泌尿器科医と婦人科医の両方と相談した上で決める必要があります。
👫 夫婦で取り組む男性不妊対策
男性不妊は、生活習慣の改善でも精子の質を向上させられる場合があります。精子は約74日(約2〜3か月)のサイクルで作られるため、生活習慣改善の効果が現れるまで3か月程度かかります。
| 対策 | 内容・ポイント |
|---|---|
| 禁煙 | 喫煙は精子の濃度・運動率・形態すべてに悪影響。多くのクリニックが治療前の禁煙を推奨する |
| 節酒 | 過度の飲酒はテストステロン値を低下させる可能性がある。週2日以上の休肝日を設ける |
| 精巣を温めない | 精子形成に適した温度は体温より約2〜3℃低い。長時間のサウナ・熱い風呂・膝上PCは避ける |
| 適度な運動・体重管理 | 肥満は精子の質低下と関連。BMI25以上の場合は体重管理も治療の一部として取り組む |
| 葉酸・亜鉛・CoQ10の摂取 | 精子の形成・DNA保護に関与する栄養素。食事からの摂取を基本にしつつ、サプリで補うことも検討できる |
| ストレス管理・睡眠 | 過度のストレスはホルモンバランスに影響。十分な睡眠(7〜8時間)が精子形成に重要 |
❓ よくある質問(FAQ)
- 不妊の約50%に男性側の因子が関与。妊活開始と同時に男性も検査を受けることが重要
- 男性不妊の専門的な検査・治療は泌尿器科(男性不妊外来)が担当。産婦人科では対応できない検査・手術がある
- 初診では精液検査に加え、身体診察・血液検査・超音波検査を組み合わせて原因を調べる。初診費用は3割負担で約7,000円前後
- 精索静脈瘤(男性不妊の約30〜40%)の顕微鏡下手術は日帰り可能・保険適用(片側約5万円・両側約8〜9万円)
- 無精子症でも、TESE・micro-TESEで精子が見つかれば顕微授精(ICSI)で妊娠できる可能性がある
- 禁煙・節酒・精巣を温めないなどの生活習慣改善も重要。効果が現れるまで3か月程度かかる
- 精索静脈瘤手術とART(体外受精)のどちらを優先するかは女性パートナーの年齢・卵巣予備能も考慮して決める
男性不妊は「精液検査をしたら正常だった」で終わりにせず、泌尿器科で詳しく調べることで隠れた原因が見つかることがあります。不妊治療は女性だけの問題ではありません。夫婦そろって検査を受け、互いの状況を共有しながら治療に取り組むことが、最善の妊娠への近道です。



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