WHO第6版(2021年)の基準値は「12か月以内にパートナーが自然妊娠した男性の下位5%」の数値です。つまり基準値を超えていても妊娠しにくい場合はありますし、下回っていても妊娠できる場合もあります。1回の結果だけで判断せず、複数回受けることが重要です。
①精液検査とは?何がわかる?
結論:精液検査では精液量・精子濃度・運動率・形態などを調べ、男性不妊の原因を特定する最も基本的な検査です。不妊治療を始めるすべての夫婦が受けることを推奨します。
💡 不妊の約半数に男性側の原因があります
不妊のうち男性のみの原因が約24%、男女双方の原因が約24%で合計約48%に男性側の要因が関与します(WHO調査)。「女性の問題」と思いがちですが、妊活を始めたら夫婦で一緒に検査を受けることが大切です。
| 検査でわかること | 診断名 |
|---|---|
| 精液中に精子がいない | 無精子症(閉塞性・非閉塞性) |
| 精子の数が基準値より少ない | 乏精子症 |
| 精子の運動率が基準値より低い | 精子無力症 |
| 正常な形の精子の割合が少ない | 奇形精子症 |
| 精液量が少ない | 精液減少症・逆行性射精の可能性 |
②WHO第6版(2021年)の正常値と各項目の意味
結論:2021年に改訂されたWHO第6版が現在の国際標準です。精子濃度が1,600万/ml以上・前進運動率32%以上・正常形態率4%以上などが主な基準です。
1.4ml以上
1回の射精で出る精液の量。禁欲2〜4日で測定。精液が少ない場合、逆行性射精(精液が膀胱に逆流)の可能性があります。精液量が少ないと精子が卵管まで到達しにくくなります。
1,600万個/ml以上
精液1ml中に含まれる精子の数。2021年の改訂で旧基準値(1,500万/ml)から引き上げられました。健常男性では1億/ml以上になることも多いです。濃度が低いと自然妊娠の確率が低下します。
4,200万個以上
精液量×精子濃度で算出される全精子数。妊娠確率に最も相関すると言われています。健常男性では1億以上が一般的です。
32%以上
直進して動く精子の割合(最も重要な項目の一つ)。2021年改訂で旧基準(40%)から変更されました。その場でくるくる回っている精子は前進運動精子に含まれません。前進する精子が少いと卵子に到達できません。
42%以上
動いている精子全体の割合(前進・非前進を含む)。前進運動率とあわせて評価されます。
4%以上
正常な形をした精子の割合。精子の形が正常でないと受精しにくくなります。WHO基準での4%は非常に低い数値に見えますが、これは厳密な形態基準(クルーガー基準)で評価するためです。
「奇形精子」という言葉に不安を感じる方もいますが、奇形精子の多さと生まれてくる子の先天異常には因果関係は認められていません。
54%以上
生きている精子の割合。動いていない精子の中にも生きているものがあり、生存率が高くても運動率が低い場合は精子無力症と区別して評価します。
※出典:WHO Laboratory Manual for the Examination and Processing of Human Semen, 6th Edition(2021年)
基準値を超えていても妊娠しにくいケースはありますし、下回っていても妊娠できるケースもあります。精液の状態は体調・ストレス・禁欲期間・季節などで大きく変動します。1回の結果だけで判断せず、少なくとも2回以上の検査結果を総合的に評価することをおすすめします。
③精液検査の受け方と費用
結論:精液検査は不妊治療クリニック・泌尿器科で受けられます。費用は保険適用で約1,000〜2,000円、自費で3,000〜8,000円程度が目安です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受けられる場所 | 不妊治療クリニック・泌尿器科・男性不妊専門外来 |
| 費用(保険適用) | 約1,000〜2,000円(3割負担) |
| 費用(自費) | 約3,000〜8,000円程度(精子機能検査は1〜3万円) |
| 禁欲期間 | 採精前2〜4日間が目安(長すぎても短すぎても不可) |
| 採精方法 | 院内採精(専用ルーム)または自宅採精(持参・1〜2時間以内) |
| 結果判明まで | 当日〜数日後(クリニックにより異なる) |
| 推奨回数 | 少なくとも2回以上(変動が大きいため) |
💡 自宅で採精してクリニックに持参する場合の注意点
採精から2時間以内に検査できるよう持参してください。精液は体温に近い温度(約36℃)で保温しながら運ぶことが推奨されます。冷やさない・高温にしないよう注意しましょう。クリニックが指定する専用容器を使用することが必要です。
④精液検査の結果が悪かった場合の改善方法
結論:精子は約74日間かけて新たに作られます。生活習慣の改善を3か月続けることで、次の検査では結果が改善する可能性があります。
喫煙は精子の数・運動率・形態すべてに悪影響を与えます。最も効果的な改善策の一つです。
過剰なアルコールはテストステロンを低下させ精子の質を悪化させます。機会飲酒程度に。
精巣は体温より2〜3℃低い環境が必要。高温で精子形成が障害されます。入浴は38〜39℃・15分程度に。
亜鉛は精子の数・運動率改善に、CoQ10は精子のエネルギー産生に、葉酸はDNA損傷リスクの低減に役立ちます。
1時間以上の自転車走行は精巣への圧迫・温度上昇で精子の質を低下させる可能性があります。
睡眠不足はテストステロンを低下させます。7〜8時間の睡眠とストレス解消を心がけましょう。
肥満・痩せすぎはともに精液の質に悪影響を与えます。BMI18.5〜24.9が目安です。
きつい下着は精巣を圧迫し温度を上げます。ボクサーパンツなどゆとりのある下着が推奨されます。
✅ 精索静脈瘤が見つかった場合は手術で大幅改善できることがあります
精索静脈瘤(男性不妊の約30%の原因)がある場合、顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術によって約80%の方で精液の改善が期待できます。まず泌尿器科・男性不妊専門医に相談しましょう。
⑤よくある質問(FAQ)
まとめ|精液検査は妊活の最初のステップ。一人で悩まず受けてみよう
- ✓WHO第6版(2021年)の基準:精子濃度1,600万/ml・前進運動率32%・正常形態率4%以上
- ✓基準値は「最低ライン」。超えていても妊娠しにくい場合・下回っても妊娠できる場合がある
- ✓精液の状態は大きく変動する。少なくとも2回以上の検査で総合的に判断する
- ✓費用:保険適用で約1,000〜2,000円・自費で3,000〜8,000円程度
- ✓禁欲期間は検査前2〜4日間が目安
- ✓精子は約74日で新たに作られる。3か月の生活習慣改善で結果が変わる可能性がある
- ✓精索静脈瘤があれば手術で約80%の方が精液改善。泌尿器科への受診を検討しよう
精液検査は妊活の中で最もシンプルで費用が安く、重要な情報が得られる検査です。「受けるのが怖い」「結果が怖い」という気持ちは理解できますが、原因がわかれば対策が取れます。ぜひ夫婦で一緒に受けてみてください。



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