女性側の不妊原因で最も多いのは卵管因子によるもので全体の30〜40%を占めています。卵管閉塞・狭窄は自覚症状がなく、子宮卵管造影検査(HSG)ではじめて判明することがほとんどです。2022年4月以降は検査・治療ともに保険適用で受けられます。
①卵管閉塞・卵管狭窄とは?
結論:卵管閉塞は卵管が詰まった状態、卵管狭窄は卵管が狭くなった状態です。どちらも精子と卵子が出会えないため、治療なしでは自然妊娠が困難になります。
卵管は子宮の左右に伸びる長さ約10cmの細い管で、排卵された卵子を取り込み、精子と卵子を受精させ、受精卵を子宮へ運ぶ重要な役割を担っています。卵管が詰まったり(閉塞)、狭くなったり(狭窄)する状態を卵管閉塞(卵管狭窄)といいます。
💡 卵管閉塞・狭窄の種類
卵管の子宮側(近位部)の閉塞:粘液栓や炎症による詰まりが多く、FT手術(卵管鏡下卵管形成術)で改善できる可能性が高い。卵管の卵巣側(遠位部・卵管采側)の閉塞:子宮内膜症・癒着によるものが多く、腹腔鏡手術や体外受精が選択される。どちらの閉塞かによって治療法が異なります。
②卵管閉塞・狭窄の主な原因
結論:原因の60%以上はクラミジア感染症です。自覚症状がないまま感染・炎症が進み、卵管に癒着や閉塞を起こします。子宮内膜症・過去の手術による癒着も主な原因です。
クラミジア感染症による卵管の狭窄や閉塞、卵管周囲の癒着が原因となるケースが卵管性不妊の60%以上を占めるとされています。クラミジアは性交渉によって感染しますが、女性はクラミジアに感染しても無症状のことが多く、感染に気づきにくいので注意が必要です。
子宮内膜症が卵管周囲に広がると、癒着を引き起こして卵管の通過性を悪化させます。卵巣にできるチョコレート嚢腫も卵管采の癒着・閉塞の原因になります。
虫垂炎・腹膜炎・帝王切開などの腹部手術後の癒着、骨盤内感染症(PID)による炎症も卵管閉塞の原因になります。手術歴がある方は検査での確認が重要です。
特に明確な感染や炎症の既往がなくても、卵管の子宮側(近位部)に粘液栓や異物が詰まり、閉塞として検出されることがあります。この場合はFT手術で改善できる可能性が高いです。
クラミジアに感染した女性の多くは無症状のため、気づかないまま卵管に炎症が広がることがあります。不妊検査でクラミジア抗体陽性が判明した場合は、パートナーも同時に抗生剤治療を受けることが重要です。治療しても既にできた卵管の癒着・閉塞は改善しないため、早期発見が鍵です。
③卵管閉塞の検査方法——子宮卵管造影検査(HSG)が基本
結論:卵管の通過性を調べる基本検査は子宮卵管造影検査(HSG)です。不妊検査として保険適用で受けられます。軽度の閉塞であれば、この検査自体が治療効果をもたらすこともあります。
🔬 子宮卵管造影検査(HSG)——最初に行う基本検査
子宮口より造影剤を注入してX線撮影をし、子宮の位置・形態・卵管の通過性や走行、腹腔内での癒着などを調べる検査です。月経直後〜排卵前の時期に行います。検査にかかる時間は15〜30分程度です。
費用(保険適用・3割負担):約5,000〜10,000円程度。造影剤注入時に痛みを感じることがありますが、検査後は速やかに和らぐことが多いです。卵管に軽度の通過障害がある場合、この検査をすることによって卵管の通過性がよくなり、妊娠しやすくなる場合もあります。
🩺 卵管通水法——超音波で確認する検査
子宮口から生理食塩水を注入し、超音波で卵管の通過性を確認する検査です。放射線被爆がなく痛みが少ない反面、造影剤検査と比べて詳細な情報が得にくいという特徴があります。
🔭 腹腔鏡検査——直接確認できる精度の高い検査
お腹に小さな穴を開け内視鏡で腹腔内を直接観察する検査です。癒着の有無・卵管の状態・子宮内膜症の広がりを最も正確に確認できます。全身麻酔が必要で入院を伴うため、HSGで異常が疑われた場合に実施されることが多いです。
④卵管閉塞の治療方法——閉塞の部位・程度によって選択が変わる
結論:卵管の子宮側の閉塞にはFT手術(卵管鏡下卵管形成術)が有効です。卵管采側の閉塞や癒着が強い場合は腹腔鏡手術または体外受精を選択します。どの治療を選ぶかは閉塞の部位・程度・年齢・パートナーの精子の状態を総合的に判断します。
🔩 FT手術(卵管鏡下卵管形成術)——近位部閉塞に有効
腟から細いカテーテルを挿入し、卵管の内側を卵管鏡で直接観察しながら詰まりや狭窄を解消する手術です。日帰り手術で手術時間は15〜30分程度。全身麻酔が必要な場合もあります。
妊娠率:FT手術後の全妊娠率は34.4%(京野アートクリニック高輪・648症例)。タイミング法・人工授精のみに限ると約22%の妊娠率。手術後1年以内に30〜40%の方が妊娠に至るとされています。
費用(保険適用・3割負担):片側約14万円、両側約28万円。高額療養費制度を利用すると片側約8万2千円、両側約8万7千円程度になります。民間医療保険の手術給付金対象になることも多いため、加入している保険の確認を。
🔭 腹腔鏡下卵管形成術——癒着剥離・遠位部閉塞に
軽度な卵管の癒着であれば腹腔鏡をみながら癒着を剥離することにより妊娠が期待できます。卵管の先端(卵管開口部)が閉鎖している例には卵管開口術が行われますが、術後の結果は癒着や閉鎖の強さによりまちまちです。子宮内膜症が原因の場合は同時に病巣を取り除くことも可能です。
🔬 体外受精(IVF)——両側閉塞・手術困難な場合
両側の卵管に閉塞があり、手術でも通過性が回復しない場合に適応されます。体外受精は、卵巣から卵子を採取し体外で受精させた後、受精卵を子宮へ移植します。体外受精は卵管閉塞そのものを改善する治療法ではありません。ただし卵管の状態に関わらず妊娠できる確率が最も高い治療法です。2022年4月から保険適用(年齢・回数制限あり)。
💊 薬物療法(原因治療)——クラミジア・内膜症の場合
クラミジア感染症を原因としている場合には、抗生剤による薬物療法を行います。パートナーの方と同時に治療を行うことが大切です。ただし、この治療は卵管閉塞・卵管狭窄を改善・解消することはできません。これ以上の悪化を防ぐことを目的とした治療です。子宮内膜症が原因の場合は、ホルモン療法で進行を抑制します。
⑤卵管閉塞と診断されたら——治療の選び方と流れ
結論:閉塞の部位・程度・年齢・精子の状態を総合的に判断して治療を選びます。片側閉塞か両側閉塞か、近位部か遠位部かで選択肢が大きく変わります。
もう一方の卵管が正常であれば自然妊娠・タイミング法・人工授精で妊娠できる可能性があります。年齢や精子の状態によっては、まずは閉塞していない側での一般不妊治療を試みることが多いです。
自然妊娠・人工授精での妊娠は困難です。閉塞部位がFT手術で改善できる近位部であればFT手術を、改善が困難な場合や卵管采側の閉塞は体外受精を選択します。
FT手術後に一般不妊治療を試みる時間的余裕が少ない場合、手術より直接体外受精を選択することが推奨されることもあります。年齢を考慮した医師との相談が重要です。
FTにより卵管の通過性が改善されると、まずタイミング法や人工授精にステップアップできます。これは「治療のステップダウン」と呼ばれ、より侵襲の少ない方法から次の治療へ進むための有効な選択肢です。
💡 FT手術はすべての施設で受けられるわけではありません
すべての不妊治療施設でFTを実施しているわけではありません。他院で検査を受け、「体外受精しか妊娠の望みはない」と言われた方でも、FTにより妊娠できたケースもあります。FT手術を検討する場合は、実施可能なクリニックへの受診・転院も視野に入れましょう。
⑥よくある質問(FAQ)
まとめ|卵管閉塞は早期発見・治療で妊娠の可能性を高められる
- ✓卵管閉塞・狭窄は女性不妊の30〜40%を占める最多原因。自覚症状がないことがほとんど
- ✓原因の60%以上はクラミジア感染症。次いで子宮内膜症・過去の手術による癒着
- ✓基本検査は子宮卵管造影検査(HSG)。保険適用で約5,000〜10,000円。軽度閉塞は検査で改善することも
- ✓子宮側(近位部)の閉塞にはFT手術が有効。保険適用・日帰り手術・術後妊娠率30〜40%
- ✓FT手術費用は3割負担で片側約14万円・両側約28万円。高額療養費制度・民間保険の活用を
- ✓卵管采側の閉塞・癒着が強い場合は腹腔鏡手術または体外受精を選択
- ✓FT手術はすべての施設で受けられるわけではない。必要な場合は実施施設への転院も検討を
「卵管が閉塞している」と聞くと、妊娠を諦めなければならないように感じるかもしれません。しかし、閉塞の部位・程度によっては手術で通過性を回復させ、自然に近い形での妊娠を目指すことができます。
まずは子宮卵管造影検査を受けて、正確な状態を把握することが大切です。早めの検査・早めの治療が、妊娠の可能性を最大限に高める鍵です。担当医とよく相談しながら、自分に合った治療の道筋を選んでいきましょう。



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