40歳未満の方が良好な胚を4回以上移植した場合、80%以上が妊娠するとされています。それでも妊娠しない場合が「着床不全」です。ERA検査・ALICE検査・慢性子宮内膜炎の治療など、近年の医療進歩で着床不全の原因が特定できるケースが増えています。
①着床障害(着床不全)とは?定義と実態
結論:良好な胚を繰り返し移植しても妊娠に至らない状態を「着床不全(反復着床不全)」といいます。胚の問題と子宮環境の問題の両方が原因として考えられます。
3回以上移植
しても陰性
約30%
💡 着床不全には「胚側の原因」と「子宮側の原因」がある
着床しない原因は大きく2つに分けられます。①胚(受精卵)の染色体異常など胚側の問題と②子宮内膜の状態・免疫・環境など子宮側の問題です。PGT-A(着床前胚染色体検査)で胚の染色体異常を除外した上で着床しない場合は、子宮側の原因を調べる検査が推奨されます。
②着床障害の主な原因
結論:着床不全の原因は「子宮因子」「着床の窓のズレ」「免疫・凝固異常」「子宮内環境の異常」などに分類されます。
子宮内腔に突出する粘膜下筋腫・子宮内膜ポリープ・中隔子宮などの形態異常・アッシャーマン症候群(子宮内癒着)は着床を物理的に妨げます。超音波検査・子宮鏡検査で発見でき、手術で改善できることがあります。
子宮内膜に慢性的な炎症が続く状態。自覚症状がほとんどないため見逃されやすいですが、反復着床不全の約30%・原因不明不妊の約30%に見られます。ALICE検査・子宮内膜組織検査で確認でき、抗菌薬治療で改善が期待できます。
「着床の窓(Implantation Window)」とは子宮内膜が受精卵を受け入れられる時間帯のことです。通常の胚移植タイミングより早い・遅いなどがあると着床しません。ERA検査で着床の窓がずれているかどうかを確認できます。約30%の反復着床不全患者で着床の窓のズレが確認されています。
抗リン脂質抗体症候群・血液凝固異常(プロテインS欠乏症・第XII因子欠乏症など)・免疫的な拒絶反応(Th1/Th2比の異常)などが着床を妨げることがあります。血液検査で確認できます。
子宮内は本来ラクトバチルス属(乳酸菌)が優位な環境が妊娠に適しているとされています。細菌バランスが崩れている(ラクトバチルスが少ない)場合、着床・妊娠に悪影響を与える可能性があります。EMMA検査で確認できます。
プロラクチンの過剰分泌・甲状腺ホルモンの異常・黄体ホルモン(プロゲステロン)の不足は子宮内膜の成熟を妨げ着床を困難にします。血液検査で確認・薬物療法で治療できます。
③着床障害の検査一覧
結論:ERA・ALICE・EMMA・TRIO検査など先進医療の検査が選択肢として増えています。基本的な子宮鏡検査・血液検査から始め、必要に応じて追加する流れが一般的です。
🔬 ERA検査(子宮内膜受容能検査)
移植と同じ条件で子宮内膜を採取し、着床に関わる236個の遺伝子を解析して「着床の窓」がずれていないかを調べます。ずれている場合は最適な移植タイミングが判明し、個別化胚移植(pET)を行います。
🦠 ALICE検査(感染性慢性子宮内膜炎検査)
子宮内膜を採取して慢性子宮内膜炎に関連する病原菌の有無・菌の種類を調べます。病原菌が特定されれば抗菌薬の種類を特定できます。ERA検査と同時に実施することが多いです。
🧫 EMMA検査(子宮内マイクロバイオーム検査)
子宮内の細菌の種類・割合を調べます。ラクトバチルス属が少ない・病原菌が多い場合は乳酸菌製剤・抗菌薬などで子宮内フローラを改善します。ALICEと同時実施が一般的です。
📦 TRIO検査(ERA+EMMA+ALICE)
ERA・EMMA・ALICEの3つを1回の子宮内膜採取で同時に実施できる検査です。着床の窓・子宮内フローラ・慢性子宮内膜炎を一度に調べられ、反復着床不全の方に包括的な情報を提供します。
🔭 子宮鏡検査
細いカメラで子宮内を直接観察する検査です。子宮筋腫・内膜ポリープ・癒着・慢性子宮内膜炎の所見(イチゴ状の発赤)を確認できます。着床不全の初期検査として推奨されます。保険適用で受けられます。
🩸 免疫・凝固検査(血液検査)
抗リン脂質抗体・Th1/Th2比・血液凝固因子(プロテインS・第XII因子)・甲状腺ホルモン・プロラクチンなどを血液検査で確認します。保険適用の範囲内で受けられる検査が多いです。
④よくある質問(FAQ)
まとめ|着床障害は原因を特定して適切な対策を取ることが大切
- ✓反復着床不全は良好な胚を3回以上移植しても妊娠しない状態。原因は胚側と子宮側の両方がある
- ✓主な原因:子宮因子・慢性子宮内膜炎(約30%)・着床の窓のズレ(約30%)・免疫凝固異常・子宮内フローラ異常
- ✓ERA検査で着床の窓を特定→個別化胚移植(pET)で着床率の改善が期待できる
- ✓ALICE検査で慢性子宮内膜炎の病原菌を特定→抗菌薬治療で改善できる
- ✓EMMA検査で子宮内フローラを確認→乳酸菌製剤・抗菌薬で改善できる
- ✓ERA・EMMA・ALICEをまとめて実施するTRIO検査が効率的
- ✓子宮鏡検査・免疫凝固検査は保険適用で受けられる基本検査
「良い胚なのになぜ着床しないのか」という疑問は、適切な検査で答えが見つかるケースが増えています。反復着床不全に悩んでいる方は、担当医師に着床不全専門の検査について相談してみてください。



コメント