- 不妊治療の費用(保険診療・自費診療ともに)は医療費控除の対象。体外受精・人工授精・検査費・薬代・通院交通費がすべて合算できる
- 年間の医療費合計(世帯)が10万円超(所得200万円未満の方は所得の5%超)で控除を受けられる
- 会社員も確定申告が必要(年末調整では医療費控除は申告できない)
- 申告期限は翌年2月16日〜3月15日だが、還付申告は5年以内さかのぼり可能
- 助成金・保険金の補填額は差し引いて計算する必要がある
- 所得が多い方(税率が高い方)が申告すると還付額が多くなる
「不妊治療に100万円以上かかったのに、確定申告をしていなかった」——こうした声は妊活コミュニティでも多く聞かれます。不妊治療の費用は、保険診療・自費診療問わず医療費控除の対象です。確定申告をすることで、所得税の還付と翌年の住民税の軽減が受けられます。
この記事では、不妊治療の医療費控除の対象費用・計算方法・e-Taxを使った申告手順・注意点まで、2025〜2026年の最新情報をもとに、初めての方でもわかるように詳しく解説します。
💰 医療費控除とは?基本を理解しよう
医療費控除とは、1年間(1月1日〜12月31日)に自分や生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告をすることで所得税の還付・住民税の軽減が受けられる制度です。
| 年間医療費合計 | 補填額(助成金等) | 控除額 | 所得税率20%の場合の還付額目安 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | なし | 20万円 | 約4万円 |
| 50万円 | なし | 40万円 | 約8万円 |
| 100万円 | なし | 90万円 | 約18万円 |
| 50万円 | 助成金30万円 | 0円(控除なし) | 0円 |
※上記は概算。実際の還付額は所得税率・他の控除の状況によって異なります。住民税(翌年度・10%)の軽減額も別途発生します。
| 所得税率 | 課税所得の目安 | 控除額20万円の場合の還付額目安 |
|---|---|---|
| 5% | 〜195万円 | 約1万円(+住民税軽減約2万円) |
| 10% | 195万〜330万円 | 約2万円(+住民税軽減約2万円) |
| 20% | 330万〜695万円 | 約4万円(+住民税軽減約2万円) |
| 23% | 695万〜900万円 | 約4.6万円(+住民税軽減約2万円) |
| 33% | 900万〜1,800万円 | 約6.6万円(+住民税軽減約2万円) |
💡 住民税の軽減も忘れずに
医療費控除の申告は、所得税の還付だけでなく、翌年度の住民税(一律10%)の軽減にもつながります。所得税の還付が少なく感じても、住民税の軽減分を合わせると節税効果は大きくなります。たとえば医療費控除額が20万円の場合、住民税の軽減は約2万円(20万円×10%)となります。
✅ 医療費控除の対象になるもの・ならないもの
不妊治療に関わるすべての費用が対象になるわけではありません。「治療を目的とした医療行為・薬剤・交通費」が基本的な対象です。
- 診察費・検査費(ホルモン検査・超音波・AMH等)
- 人工授精(AIH)の費用
- 体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)の費用
- 採卵・胚培養・胚移植・凍結保存の費用
- 先進医療の費用(ERA・タイムラプス等)
- 処方された薬剤・注射(排卵誘発剤等)の費用
- 男性の精液検査・泌尿器科治療費
- 精索静脈瘤手術・TESE・micro-TESEの費用
- 通院に要した公共交通機関の交通費(電車・バス)
- 転院の際の紹介状発行費用
- 医師が同意した鍼灸・あん摩の施術費
- 市販の医薬品(薬事承認された薬)購入費
- 妊活サプリメント・健康食品
- 妊娠検査薬・排卵検査薬の購入費
- 自家用車のガソリン代・駐車場代
- 健康診断・人間ドック費用(異常なしの場合)
- 診断書の作成費用(保険会社提出用等)
- 差額ベッド代(快適さのための選択)
- 里帰り出産のための交通費
- 妊活セミナー・カウンセリング費用(医師以外)
- 美容目的・リラクゼーション目的の鍼灸
- コルセット等の補助器具(医師指示がない場合)
不妊治療助成金(国・自治体)・生命保険の給付金・健康保険の高額療養費払い戻しなどで補填された金額は、医療費から差し引いて計算します。たとえば体外受精費用が50万円で、不妊治療助成金を30万円受け取った場合、医療費の計算に使える金額は20万円(50万円−30万円)になります。補填額を超えた費用分のみ計上できます。
2022年4月以降、不妊治療が保険適用になりました。保険診療の費用は保険診療分として、自費(先進医療・自費検査等)の費用は自費分として、いずれも医療費控除の対象です。PGT-Aは保険適用外のため実施周期の治療費はすべて自費になりますが、その費用もすべて医療費控除に含めることができます。
📋 必要書類の準備チェックリスト
確定申告の前に以下の書類を準備しておきましょう。領収書は申告書への添付は不要になりましたが、5年間の保管義務があります。
| 書類 | 入手方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 医療費の領収書・明細書 | クリニック・薬局等で受け取る | 申告書への添付は不要だが手元で5年間保管が必要。明細書の作成に必要 |
| 医療費控除の明細書 | 国税庁HP・e-Taxで作成 | 1年分の医療費を医療機関・薬局ごとに集計して記入する書類 |
| 確定申告書(第一表・第二表) | 国税庁HP・e-Taxで作成 | 会社員の方は源泉徴収票の情報を転記する |
| 源泉徴収票 | 勤務先から年末〜1月に発行 | 給与収入・所得税額・各種控除の確認に必要。捨てずに保管する |
| マイナンバーカード(または確認書類) | お手元のカード | e-Taxはマイナンバーカードで本人確認。カードがない場合は通知カード+身元確認書類 |
| 還付金振込先の口座情報 | お手元の通帳・キャッシュカード | 還付金の振込先として申告書に記入する |
| 助成金・補填額がわかる書類 | 自治体・保険会社等から受領 | 不妊治療助成金の受取額・保険給付額を差し引く計算に必要 |
💡 マイナポータル連携で自動入力が可能
マイナンバーカードを持っている方は、マイナポータルと連携することで健康保険組合からの「医療費通知情報」が確定申告書に自動入力されます。ただし、自費診療の領収書やクリニック以外の費用は自動連携されないため、手動での追加入力が必要です。自費診療が多い不妊治療では、領収書の保管が特に重要です。
💻 e-Taxを使った申告手順(スマホ・PC対応)
e-Taxを使えばオンラインで完結でき、税務署に行く必要がありません。スマホでも申告できます。2026年分(令和7年分)の申告期間は2027年2月16日〜3月15日ですが、還付申告は1月1日から5年以内いつでも申告できます。
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセス——www.nta.go.jp から「確定申告書等作成コーナー」へ。スマホの場合はマイナポータルアプリからも入れる
- 申告方法を選択:「マイナンバーカードでログイン(e-Tax)」——マイナンバーカード+スマホまたはICカードリーダーが必要。カードがない場合はID・パスワード方式または書面申告を選択
- 「医療費控除の明細書」を作成する——医療機関ごとに「医療を受けた方の氏名」「支払先の名称」「支払った医療費の額」「保険金等で補填される額」を入力。マイナポータル連携がある場合は自動入力を活用し、自費診療分を追加入力する
- 控除額・還付額を確認する——入力した医療費・補填額・源泉徴収票の情報から自動計算される。控除額・所得税還付額・住民税軽減額を確認する
- 確定申告書(第一表・第二表)に転記・提出——医療費控除の明細書の金額が申告書に自動反映される。内容を確認してe-Taxで送信(または印刷して郵送・持参)する
- 還付金の振込を確認する——e-Taxで申告の場合は通常3週間〜1か月程度で指定口座に振込される。書面申告の場合は1〜2か月程度かかる場合がある
| 項目 | 書き方・ポイント |
|---|---|
| 医療を受けた方の氏名 | 妻・夫それぞれで受けた治療を、それぞれの氏名で記入。夫婦分を一枚の明細書にまとめられる |
| 支払先の名称 | クリニック名・薬局名・病院名を記入。「○○クリニック」「△△薬局」など。医療機関ごとに年間合計額を集計する |
| 支払った医療費の合計額 | 1年間(1月1日〜12月31日)に実際に支払った金額の合計。保険診療の自己負担分も含む |
| 保険金等で補填される金額 | 各費用に対応する補填金額を記入。不妊治療助成金・生命保険給付金などを費用ごとに対応させて入力 |
| 交通費 | 公共交通機関(電車・バス)の実費を記入。IC乗車履歴・交通系ICの履歴を活用すると便利。タクシーは原則対象外(緊急時を除く) |
🎯 医療費控除を最大限に活用するためのポイント
共働きの夫婦の場合、所得が多い方が申告すると還付額が多くなります。所得税率が高い方が申告することで、同じ医療費控除額でも戻ってくる金額が大きくなるためです。ただし、医療費を実際に支払った人が申告するという原則があります。夫婦の場合は共有口座からの支払いを医療費に充てるか、どちらが支払ったかを統一しておくと申告がスムーズです。
医療費控除は生計を一にする家族全員分を合算できます。夫の不妊治療費(精索静脈瘤手術・精液検査等)・妻の不妊治療費・その他家族の医療費をすべて合計して申告できます。10万円に満たない場合でも、家族分を合算することで超える場合があります。
公共交通機関の交通費は医療費控除の対象ですが、領収書がないケースがほとんどです。通院のたびに日付・医療機関名・交通手段・金額をメモやアプリで記録しておきましょう。Suica・PASMOなどの交通系ICカードの利用履歴も活用できます。不妊治療は通院回数が多いため、交通費の合計が数万円になることも珍しくありません。
医療費控除は過去5年分をさかのぼって還付申告できます(例:2026年5月に申告できる過去分は2021年分まで)。申告が遅れてしまっている年がある方や、「去年申告し忘れた」という方は今からでも申告が可能です。過去の領収書を保管していれば、過去年度分を別々に申告することができます。
❓ よくある質問(FAQ)
- 不妊治療の費用(保険診療・自費診療ともに)は医療費控除の対象。体外受精・人工授精・検査・薬代・通院交通費をすべて合算して申告できる
- 年間医療費(世帯合計)が10万円超で控除対象。所得200万円未満は「所得×5%」を超えた分が対象
- 会社員も確定申告が必要(年末調整では医療費控除は申告できない)。e-Taxでオンライン完結が便利
- 助成金・保険金の補填額は医療費から差し引く必要がある。領収書と補填額の証明書を一緒に保管する
- 共働き夫婦は所得が多い方(税率が高い方)が申告すると還付額が多くなる
- 過去5年分はさかのぼって還付申告が可能。申告し忘れている年がある場合は今からでも申告できる
- 医療費控除は所得税の還付だけでなく翌年度の住民税(10%)軽減にもつながる。両方合わせると節税効果は大きい
不妊治療は高額な費用がかかることが多く、医療費控除の申告で取り戻せる金額は決して小さくありません。「e-Taxで申告するのが難しそう」と感じる方も、国税庁の確定申告書等作成コーナーはガイドに沿って入力するだけで書類が完成します。まだ申告していない方は、ぜひ今シーズンの申告を検討してください。



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