- 胚盤胞のグレードは「Gardner(ガードナー)分類」で評価。ステージ(1〜6)+内部細胞塊(A/B/C)+栄養外胚葉(A/B/C)の3要素で表す
- 最高グレードは「4AA・5AA・6AA」。ただしグレードは「見た目の評価」であり、妊娠できるかどうかの中身(染色体の正常性)を保証するものではない
- 低グレード(CC・BC等)でも妊娠・出産に至るケースは珍しくない。妊娠すれば流産率・早産率・出生体重に良好胚との有意差はないとする研究報告がある
- グレードより年齢の影響が大きい。同じグレードでも35歳以上では出産率が顕著に低下する
- 5日目(day5)胚盤胞は6日目(day6)より一般的に着床率が高い傾向がある
- 良好グレードでも繰り返し移植が失敗する場合は、着床障害の検査(ERA・EMMA・ALICE等)を検討する価値がある
「4BBと言われたけど良いグレードなの?」「CCのグレードでも妊娠できる?」——体外受精を経験した方なら誰もが気になる胚盤胞のグレード。でも、グレードについて正しく理解している方は意外と少なく、数値に一喜一憂して不安を感じてしまう方もたくさんいます。
この記事では、胚盤胞のGardner分類の見方・グレードと妊娠率・着床率の関係・低グレードでも妊娠できる理由・グレード以外に重要な要素まで、2024〜2026年の最新研究データをもとに詳しく解説します。
🔬 胚盤胞とは?初期胚との違い
受精卵は採卵後から培養されながら細胞分裂を繰り返し成長します。体外受精では、この過程を体外で観察しながら移植に適した胚を選びます。
| 採卵後の日数 | 胚の状態 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1日目 | 前核期胚(2PN) | 受精が確認され、卵子・精子それぞれの核(前核)が見える状態 |
| 2〜3日目 | 分割期胚(初期胚) | 2〜8細胞に分裂した状態。初期胚移植はこの時期に実施 |
| 4日目 | 桑実胚(そうじつはい) | 細胞が密着してかたまり状になる。外見が桑の実に似ていることから命名 |
| 5〜6日目 | 胚盤胞 | 内部に液体で満たされた空洞(胞胚腔)が形成され、将来の胎児になる部分(内部細胞塊)と胎盤になる部分(栄養外胚葉)が分化している状態 |
💡 なぜ胚盤胞まで培養するの?
胚盤胞まで成長できた受精卵は、着床する直前の段階まで生命力があることが確認できます。初期胚移植と比較すると、胚盤胞移植の方が移植あたりの妊娠率が約2倍高いというデータがあります。一方、受精した卵子のすべてが胚盤胞まで成長するわけではなく、胚盤胞到達率は受精卵の約40〜60%程度です。年齢が上がるほどこの割合は低下します。
📊 Gardner分類(ガードナー分類)の見方
胚盤胞のグレードは世界的に「Gardner分類」が使われています。グレードは3つの要素の組み合わせで表されます。例:「4AA」「5BC」「3BB」など。
胞胚腔が小さく胚全体の1/2以下(1)または1/2以上(2)に広がった状態。内部細胞塊・栄養外胚葉の区別がまだつかない
胞胚腔が胚全体に広がり(3)、さらに拡張して透明帯が薄くなってきた状態(4)。ICM・TEの評価が可能になる
胚が透明帯から脱出し始めた(5:ハッチング中)または完全に脱出した状態(6:ハッチング後)。着床直前の最も成熟した段階
細胞が多く、緊密にしっかりまとまっている状態。将来赤ちゃんになる細胞が豊富
細胞がやや少なく、疎らな状態。移植可能な品質
細胞数が少なく、まばらな状態。妊娠率は低めだが出産事例あり
細胞数が多く、規則正しく胚を覆っている状態。胎盤の形成能力が高い
細胞数がやや少なく、まばらに分布している状態。移植可能な品質
細胞数が少なく、非常にまばらな状態。妊娠率は低めだが出産事例あり
💡 グレードの読み方の例
「4AA」→ ステージ4(拡張胚盤胞)・内部細胞塊A(良好)・栄養外胚葉A(良好)→ 最高ランクの胚盤胞
「3BB」→ ステージ3(完全胚盤胞)・内部細胞塊B(中程度)・栄養外胚葉B(中程度)→ 良好な胚盤胞
「5BC」→ ステージ5(孵化中)・内部細胞塊B(中程度)・栄養外胚葉C(低品質)→ ステージは進んでいるが細胞の質はやや低め
「4CC」→ ステージ4・ICM・TE ともにC → 低グレードだが移植例・出産例あり
📈 グレード別・妊娠率・着床率の目安
グレードが高いほど妊娠率・着床率が高い傾向がありますが、低グレードでも妊娠・出産は可能です。以下は一般的な傾向を示すものであり、クリニック・年齢・個人差によって大きく異なります。
| グレード(例) | 一般的な分類 | 着床率・妊娠率の傾向 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 4AA・5AA・6AA | 最良好胚 | 最も高い(40〜60%程度の施設データも) | 良好胚で移植を繰り返しても妊娠しない場合は着床障害の検査を検討 |
| 4AB・4BA・5AB | 良好胚 | AAに準ずる。TE・ICMのどちらかがAならAAに近い成績の施設が多い | 年齢が35歳未満であればAAとの差が縮まる傾向 |
| 4BB・5BB | 標準的な良好胚 | 十分な妊娠率。多くのクリニックで移植対象 | 年齢が低いほどAAとの差は小さい |
| 4BC・4CB・4CC | 低グレード胚 | BBより低めだが出産例は多数あり | 年齢・施設の方針によって凍結対象となるかどうかが異なる |
同じ4AAグレードの胚でも、25歳と40歳の女性では出産率に大きな差があります。これは胚のグレード(形態)が良くても、染色体異常(加齢による卵子の染色体分離エラー)の影響が年齢とともに増加するためです。ある研究では、低グレード胚盤胞移植を受けた25歳の予測生児率は約40%ですが、同じ低グレードでも35歳では約21%とほぼ半分になることが報告されています。グレードの数値だけでなく、年齢を考慮した総合的な判断が重要です。
| 項目 | day5(5日目)胚盤胞 | day6(6日目)胚盤胞 |
|---|---|---|
| 着床率の傾向 | 一般的にday6より高め。子宮内膜の着床の窓とのタイミングが合いやすい | day5より着床率がやや低い傾向だが、出産例は多数あり |
| グレードとの関係 | day5で良好グレードに到達することが理想的 | day6でも良好グレードなら移植対象。ただしday5 AAとday6 CCでは大きな差がある |
| 染色体正常率 | 一般的にday6より高い傾向。成長スピードが速い胚は染色体が正常なことが多い | day5より染色体異常の割合がやや高い傾向が報告されている |
| PGT-Aとの関係 | PGT-A検査は日数に関わらず実施可能。グレードより染色体の正常性が直接評価できる | 同上 |
💌 低グレードでも諦めないで——研究が示す希望
グレードが低くても妊娠・出産に至ることは決して珍しくありません。現役の胚培養士も「4AAで妊娠しなかったのにBCで妊娠した」という経験を多く持っています。グレードはあくまで「見た目の評価」であり、胚が持つ妊娠のポテンシャル(中身)を完全には反映していません。低グレード胚に対して過度に落胆せず、担当医と治療方針を相談しながら前向きに取り組むことが大切です。
| 研究内容 | 結果・ポイント |
|---|---|
| 低グレード胚盤胞の出産後の転帰(大規模研究) | 10,018人・10,964回の単一胚盤胞移植を調べた大規模研究で、低グレード胚でも妊娠すれば流産率・早産率・出生体重に良好胚と有意差はなかったと報告。生まれた赤ちゃんの発育に差はないとされる |
| 出生時の身長・体重との関係 | TE(栄養外胚葉)グレードCがAより出生時身長が0.4cm長いという報告があるが、研究者自身が「1cm単位で測定するものであり気にしなくてよい」と述べている |
| PGT-Aとグレードの相関 | すべての年齢においてグレードと正常染色体の確率には相関関係があるが、低グレードでも正常染色体を持つ胚は存在する |
💡 「グレードは見た目、染色体の正常性は中身」
Gardner分類のグレードは、胚の「その時点での見た目の良さ」を評価したものです。良い見た目の胚でも染色体異常を持つことがあり、逆に見た目が良くない胚でも染色体が正常で出産に至ることがあります。染色体の正常性を直接評価するのがPGT-A(着床前染色体異数性検査)ですが、保険適用外かつ実施できる条件が限られます。まず担当医と現在の胚の状況・治療方針について丁寧に話し合いましょう。
🔄 良好グレードでも着床しない場合に考えること
4AAなど最良好グレードの胚を複数回移植しても妊娠しない「反復着床不全」の場合、グレード以外の要因を探る必要があります。
| 検査・対処 | 内容・目的 |
|---|---|
| ERA検査(着床の窓の検査) | 子宮内膜の着床に最適なタイミング(着床の窓)がずれていないかを調べる。先進医療として保険診療と同時に実施可能 |
| EMMA・ALICE(子宮内フローラ) | 子宮内の細菌バランス(ラクトバチルス菌の割合・慢性子宮内膜炎の有無)を調べる |
| 慢性子宮内膜炎の検査・治療 | CD138免疫染色などで慢性子宮内膜炎を診断。抗生剤治療後に移植成績が改善することがある |
| 子宮内膜ポリープ・子宮形態の確認 | 子宮鏡検査で子宮内膜ポリープや子宮の形態異常を確認・治療する |
| 不育症の検査 | 抗リン脂質抗体・血液凝固異常・染色体検査など。着床不全と不育症の原因が重なることがある |
| 精子DNA断片化検査 | 精子のDNA品質が低下している場合、受精後の胚の発育・着床に影響することがある |
❓ よくある質問(FAQ)
- 胚盤胞のグレードはGardner分類で「ステージ(1〜6)+ICM(A/B/C)+TE(A/B/C)」の組み合わせで表す。例:4AA・3BB・5BCなど
- グレードは「その時点での見た目の評価」であり、染色体の正常性(妊娠できる中身)を保証するものではない
- 一般的にグレードが高いほど着床率・妊娠率が高い傾向があるが、低グレード(CC・BC等)でも妊娠・出産に至るケースは珍しくない
- 妊娠すれば、低グレード胚と良好胚で流産率・早産率・出生体重に有意差はないとする大規模研究がある
- グレードより年齢の影響が大きい。同じグレードでも35歳以上では出産率が顕著に低下する
- 良好グレードでも繰り返し着床しない場合は、ERA・EMMA・ALICE・慢性子宮内膜炎検査など着床環境の精密検査を検討する
- グレードの数値に一喜一憂せず、担当医と治療方針をしっかり話し合いながら前向きに取り組むことが大切
グレードはあくまでも参考指標のひとつです。「グレードが低い=妊娠できない」ではありませんし、「グレードが高い=必ず妊娠できる」でもありません。大切なのは、数値に振り回されることなく、担当医と信頼関係を築きながら一歩一歩治療を進めていくことです。



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